アニメ批評その1114 先輩はおとこのこ
評価:★(良作に見えて…)
概要
ぽむによる日本の漫画作品。
『LINEマンガ』(LINE Digital Frontier)にて、2019年12月7日に連載開始し、2021年12月30日に完結したが、本編の前日譚を描く『先輩はおとこのこ 出会い編』として2023年12月21日に連載が再開された。
男の娘・花岡まことを主軸として、「男女3人の人間模様と繊細な心理描写」が描かれている作品。
2024年1月時点で、『LINEマンガ』での国内累計閲覧数が1億8000万ビューを突破している。
2023年3月に東京ビッグサイトで開催された「AnimeJapan 2023」にて、本作品のテレビアニメ化が発表され、2024年7月から9月まで放送された。
あらすじ
花岡まことは、後輩の蒼井咲から告白を受ける。
そこで、まことは自身がセーラー服と長髪のウィッグを着用しているだけで実は男子であるということを明かす。
しかし、その後も後輩の咲はまことについてくる。
後に、まことに対して特別な感情を抱いているまことの幼馴染・大我竜二を加えた3人の間で淡い恋心が揺れ動く。
物語は主人公が後輩の女子に告白される処から始まります。
「ごめーん、僕おとのこのなんだ」
「それでもいいです!」
そこに主人公を性的な目で見る親友面した男が挟まって…といった感じです。
本作はトランス問題に深く踏み入った作品で、
明るさが取り柄と思われた女の子も、闇深い問題を抱えていたりと一見良作に見えはするのですが…
この作品を好きな方には申し訳無いのですが、私はとても浅く感じてしまいました。
◆フィクションであっても…
リアリティーが無さ過ぎると白けるモノですが、アニメというのは多少現実離れしていた方が面白かったりします。
しかし、本作の様なジェンダー問題に踏み入った作品は、ある程度のリアリティーが無いと共感する事が困難です。
私はおとこのこでも無ければ同性愛者でもありませんが、友人知人にそういった方が多いので、少なからず彼ら(彼女)らがした苦労を多少なりとも知ってます。
本作の主人公は美少年な上に運動神経も抜群で、実家もかなり裕福である事が伺えます。
主人公の母親はそうでは無いのですが父親の方が理解があり、高校も知り合いのツテで女装が許される学校に進学しております。
学校では体育の用具小屋を私的に使用する事が許され、女装道具一式が保管されているという特別待遇です。
可愛らしい後輩の女子に慕われ、
親友までいるのですから、どこをどう見ても幸せな感じにしか見えません。
校内でも最初は浮いていた主人公ですが別に虐められていた訳でもありませんし、バスケで活躍してからは男子とは打ち解けて、女子からは好かれるという勝ち組ロードを歩んでおります。
一応家庭環境と言うか、母親の方が色々あって精神的に不安定だったり、主人公が中学校時代イジメられてたという過去もあるのですが、高校生となった主人公が余りにも恵まれすぎなため「現実はこんなに甘くはねーよ!」と思ってしまうのは無理からぬ事です。
ジェンダーギャップでお悩みの方が視聴して「私もこんな勝ち組人生送りたかったなー」と思った時に、それが楽しいとか面白いという感情に変換出来るのかが甚だ疑問です。
「モテない男がハーレムモノを見るのと一緒だろ?」というのは暴論で、いくら努力してどうにもならない事や、周りから迫害や差別、時にはイジメられたりもしますので、それをこういった作品を見て分かった様な事を言われたら腹が立つんじゃないか?と思う訳ですが…どうなんでしょうかね?
性転換して綺麗な女性に変貌した友人もおりましたが、手術して終わり…では無く、その後のメンテナンスが大変だという話も聞きましたし、性転換していない方はどうしても周りから白い目で見られがちです。
昔お付き合いしていた女性が下着屋さんで働いてたのですが、そういったお店にも「体は男性だけど心は女性」という方も来店される事が多く、その際は丁重にお詫びして退店して頂いてたそうです。
彼女自身はトランス女性に対しての偏見は無かったのですが、現実はそういった方が来店されると他の女性客が慌てて店を出てしまう事から「差別の様な事はしたくないけど商売にならないから仕方なく退店して頂いてた。とても心が痛んだ。」という愚痴を50回くらい聞かされました。
ファッション感覚でトランス女性を演じてる方もいれば、軽い気持ちでおとこのこをしている方もいらっしゃるのですが、大半のトランスジェンダーは様々な苦労をしておりますので、こんな恵まれた境遇にいる主人公に共感意識が持てるのかというとかなり厳しいと思います。
フィクションだから困難な境遇でも幸せになってもいいじゃないか?という考え方もあるかと思いますが、テーマがテーマだけにジェンダー問題で真剣に悩んでる方を馬鹿にした様な作品というのが私の評価です。
私はおとこのこキャラが好きな方ではあるのですが、こういった作風だとどうしても厳しい目で見てしまいます。
本作を良作だと思った方々に対しては、本当にこういった問題に心痛めてる方に寄り添った作品なのかについて、もう一度お考え頂けましたら幸いです。
それでは、良きアニメライフをノシ