前回の記事では、
・どちらが勝つか分からないし、誰にも断言出来ない
・ユーザー間では「対コナミ」では無く「対アンチ」との闘争である
という主張をさせて頂きましたが、本件において色々と勘違いしている方がまだまだ多い様なので、今回はもう少しツッコんだお話をさせて頂こうと思います。
改めてもう一度言っておきますが、
「どちらが勝つか分からないし、誰にも断言出来ない」
この言葉を覚えておいて下さい。

◆今回の争点

「パワプロのシステムをパクった」と言われておりますが、基本システムの特許は既に切れております。
コナミ側は賠償金の他にサービスの差し止めも要求してきている事から「現在も有効で裁判中にも切れないはずの特許」の部分で訴えてきている事は明白です。
最も有力視されているのは特許5814300で、ウマ娘に例えるとサポカのイベント管理に該当します。
サイゲ側も馬鹿では無いので、コナミが持ってる特許を回避する形で現在のサポカシステムを構築したのですが、コナミ側はウマ娘がリリースされた後に元々ある特許に後付けし、ウマ娘のシステムまで網羅する様な形を取りました。
コナミ側からすると「何から何までウチのパワプロをパクるんじゃねーよ！」
サイゲ側からすると「そっちの特許を上手く回避してるのに後付けでメタってんじゃねーよ！」となります。
※追加特許の出願は2021年7月8日で、2021年10月27日に登録されております。
サイゲ側が不利と言われている点はまさにこの部分であり、追加された特許がウマ娘を完全にメタった様なモノであり、侵害している特許が一つや二つの場合は「似てるけどまぁよくありそうな事だし」という事で訴えた側が負ける事があるのですが、それが10個以上となるとサイゲ側は「特許を侵害してません！」と言い張るのは無理があるのでは？という事です。

◆コナミの裁判実績

「コナミは法律に強い」というイメージがあるのですが、そこは意見の分かれる処です。
私が知る限りコナミが勝利した裁判は、

ときめきメモリアル(以下ときメモ)関連の2回だけです。
一つはときメモの改造メモリを販売した業者相手に裁判し、一審では敗訴したモノの控訴し勝利した件です。
もう1件はときメモのAVを販売した方を訴えた件で、コチラは「同人作品だとしてもときメモのイメージを著しく侵害した」との事で、コナミ側が勝訴しました。
共に特許の侵害では無かった件であり、特許絡みの裁判では、

ジャレコという企業が出した「VJ」というゲームがコナミの「ビートマニア」のパクり以外の何物でも無かったので電撃訴訟となりました。
この件はナムコやSEGAにも飛び火し「コナミがトチ狂った」と言われましたが、VJの件に関してはどこからどう見てもビートマニアのパクりであり、ウマ娘の訴訟の件と違って「業界の慣例」とか「類似作品は多くあるので」といった事が通用しない状況でした。
今でこそ多数の音ゲーがゲームセンターで稼働しておりますが、当時は音ゲーといえばコナミ産のモノしか無い状態で、中でもビートマニアに類似したゲームはVJをおいて他にはありませんでした。
それでもコナミは敗訴し、ナムコからカウンター訴訟でそちらまで敗訴しております。
サイゲ側が不利でも裁判の行方が分からないといったのはこういった経緯もあったからで、誰が見ても「コチラが勝つだろう」と思った裁判がその通りにならない事例がありますので、判決が出るまでは誰も断言は出来ないのです。
＜追記＞
韓国の企業が出したオンライン野球ゲーム「新野球」がパワプロのパクりとして訴えを起こしましたが、コチラも敗訴しております。

◆特許ヤクザ

コナミが「特許ヤクザ」とか「特許ゴロ」と呼ばれる所以ですが、過去に特許では無いのですが、
・機動警察
・パトレイバー
・沈黙の艦隊
・スラムダンク
・ホワイトベース
といったモノがコナミによって商標登録されておりました。
これは過去に「グラディウス」というゲームを発売しようとしたら、その「グラディウス」という名称はナムコが既に商標登録を出願しており揉めたという経緯があった事から、社内のそのプランが立ち上がった瞬間に取り合えず商標登録をしておこう！という事だったそうです。
他にはゲーム内におけるカメラワークの一部でコナミが特許を持っており、
「最近出たゲームのカメラワークがクソなのは、コナミがその特許を持っているせいだ」
「コナミの特許が邪魔でカメラワークに制限が掛かっている」
と言われていたのですがコレは濡れ衣で、かなり限定的な条件下での話で殆ど影響が無いそうです。
コナミ側としてはトラブルを避けるために取得した商標登録や特許だったのですが、こういった事が悪意に満ちた切り取りで世に発信されてしまい、イメージが低下してしまいました。
まぁ、商標登録の件はきちんとした説明が無いと誰でも頭に来る事なので仕方無いと思います＾＾；

◆サイゲは負けるのか？

コナミと1年以上(2年近く？)話し合いをして決着が付かず、ユーザーには「心配ないよ」的なメッセージまで発信しておりますので、裁判で勝つ自信がありそうなモノですが・・・
コロプラが任天堂に訴えられた時は「余裕で勝てます」みたいな事を言ってたクセに惨敗しております。
サイゲ側も虚勢を張っているだけの可能性もありますが、今回の件はコナミ対サイゲームズでは無く「対サイバーエージェント」とも言えますので、軽はずみな発言は無いと思ってます。
コナミの追加特許の件に関しては、明らかにウマ娘のシステムをメタったモノですので、それを根拠に争うという事になりますと「コナミがウマ娘のシステムをパクって特許を出願した」という論調で戦うのかもしれません。
慣例からしてそれは通ら無さそうですが、結局裁判は裁判官の価値観やお気持ち次第なので、どう転ぶかは全く分かりません。

加えてパワプロ側もウマ娘のパクりか？と思わせる様な事もしておりますので、カウンター訴訟を喰らう可能性もあります。
絶対に勝てそうなVJ訴訟で敗訴し、ナムコから特許侵害で敗訴した経緯を考えますと絶対に無いとは言い切れません。
もしサイゲ側が敗訴したとしても「賠償金4億円」くらいで済めば、それは勝利したのに等しい損害です。
元コナミ社員の岡本吉起氏も「恐らくコナミの嫉妬で始まった裁判だが、コナミが勝訴したとしてもウマ娘がサ終する可能性は限りなく低い」とおっしゃられてます。
今まで挙げた収益を考えれば4億円だったら微々たる金額ですし、看板に多少傷が付くかもしれませんが、今後もウマ娘が従来通りサービスを継続出来るとなれば「4億円でシステムを買った」という事でまぁお徳なお買い物になるのでは無いかと思います。
先に述べたときメモの改造メモリの裁判の件ですが、勝訴したコナミには訴えた額の満額が得られた訳では無い事も付け加えておきます。

◆立場によって見方や意見が変わる

私は極力ニュートラルな状態で本件を見守ろうと思ってますが、サイゲやウマ娘が嫌いな方は、
「パワプロをパクったウマ娘は最低だと思う」
「基本他社のパクりゲーしか作れないサイゲは終わってると思う」
といった意見になりがちでしょうし、コナミが嫌いとかウマ娘が好きとかであれば、
「パワプロの特許を避けてリリースしたのに、後出しでウマ娘のシステムで特許を取るのは卑怯」
「特許ゴロが何をほざいてるんだ？」
といった発言が出てきます。
恐らく裁判は長期化するでしょうし、裁判中もロクに情報は開示されないと思います。
我々部外者は憶測で語る事しか出来ず、その立場によって勝って欲しい方を上げたり、負けて欲しい方を貶めたりしがちです。
コナミの敗訴の歴史について記載しましたが、サイバーエージェントも裁判に強い企業というイメージはありませんし、法律を抜きにして考えてもウマ娘に限らずオリジナリティーが低いアプリばかりリリースしておりますので、イメージが良いとは言えなさそうです。
ウマ娘というコンテンツがダメージを受ける事については悲しく思いますが、だからといってコナミ叩きをしようとは思いませんし、するべきでは無いとも思ってます。
「こうだったらいいな」
「こうなるんじゃないか？」
くらいのニュアンスで語り合うのは良いと思いますが、断定的に結論付けるのは馬鹿だと思われるのでヤメておいた方がいいです。
それぞれの企業に悪いイメージを持った方はいらっしゃるでしょうし私にもそれはありますが、裁判の判決と企業のイメージは別問題なので、混同して語るにもヤメておきましょう。
＜追記＞

なんか新しい記事が出てました。

①主人公キャラクターなどのパラメータを変更または設定し育成するパートや、

②その育成キャラクターを用いたパート、などからなるゲームシステムに関して特許権を有している。

このシステムと、ウマ娘における①シナリオに沿ったトレーニングなどで能力を引き上げ、キャラクターを育成する、②育成を終えたキャラクターは「殿堂入りウマ娘」として登録され、ほかのプレーヤーと対戦させる「チーム競技場」というゲーム内レースに使用することが可能、などといった要素が一致するため、特許権侵害に当たるとの主張だ。

コナミ側の一部の主張は既に特許が切れているモノもありそうですが、特許が切れていても遡って賠償金を請求する事が可能です。
最も重要な点は「サービスの差し止めが可能かどうか」であり、この部分は裁判が終了するまで特許が切れ無さそうな部分のはずで、恐らくサポカのイベント関連の件と推測します。

何にせよ、早期に和解してくれる事を願っております。
それでは、良きウマ娘ライフをﾉｼ

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