【名馬列伝】ニシノフラワー【天才少女】
「小さくて可愛い」
それ以外のフラワーちゃんを皆さんはご存じでしょうか?
今回はフラワーちゃんの凄さは可愛いだけでは無い!という事を世に伝える記事となります。
◆生い立ち
本馬の生産者である西山牧場は、日本において社台グループに次ぐ第2位の生産規模を持った牧場でしたが、大雑把な牧場経営から長らく目立った活躍馬が現れませんでした。
この状況を打開するため、1987年より生産・育成各部門の改革に着手します。
1989年2月、その一環として約2億円を投じてアメリカより4頭の繁殖牝馬を輸入し、その内の1頭がフラワーちゃんを身に宿したデュプリシトがいました。
同年4月、デュプリシトはフラワーちゃんを出産。
期待を受けての誕生でしたが、細身の体格で目立つ所は無く、数名の調教師に管理を断られてしまいます。
最終的に栗東の松田正弘厩舎の管理馬と決まりますが、松田氏が初めてフラワーを見た時の印象は「脚ばかりヒョロッと長くて幅のない、バンビみたいな馬」と語りました。
1991年競走年齢の3歳に達しニシノフラワーと命名されますが、調教でも目立った動きはありませんでした。
◆ジュニア期
1991年7月7日札幌開催の新馬戦で、佐藤正雄を鞍上にデビュー。
これより前に骨膜炎を生じており、脚の状態を考慮して負担の少ないダート戦でデビューします。
当日は単勝4番人気でしたが2着に4馬身差を付けて圧勝。
次走の札幌3歳ステークスは「使える適当なレースがない」からという消極的なレース選択でしたが、道中2番手から直線で後続を突き放し、ディスコホールに3馬身半の差を付けて優勝。
騎乗した佐藤騎手にとって、これがデビュー22年目で初めての重賞制覇となります。
連勝で松田氏もフラワーちゃんの素質を認めいったん休養に出された後、3歳女王戦阪神3歳牝馬ステークスへの前哨戦として、デイリー杯3歳ステークスに出走。
騎乗停止中だった佐藤騎手に代わって田原成貴騎手が手綱を執り、前走と同じく3馬身半差で圧勝します。
本番となる阪神3歳牝馬ステークスでは騎手が佐藤氏に戻り、1番人気に支持されます。
レースは道中5-6番手から直線で抜け出し、ゴール前で追い込んだサンエイサンキューとシンコウラブリイ(共にG1レベルの強い馬)を退けて優勝します。
人馬ともに初のGI制覇を果たし、この勝利は西山牧場にとっても開業25年目で初めてのGI制覇でした。
4戦4勝・うち重賞3勝の成績で、翌年1月には当年の最優秀3歳牝馬に満票で選出されます。
◆クラッシック期
クラシック期初戦はチューリップ賞(桜花賞トライアル)から始動し、単勝オッズ1.2倍という圧倒的1番人気に支持されます。
しかし佐藤騎手が第3コーナーで仕掛けを遅らせた結果、最終コーナーから馬群に包まれて抜け出せない状態となり、その不利が祟って2着となります。
勝ったアドラーブルは後のオークス馬ですし、佐藤騎手が「桜花賞を勝つために一度馬群を経験させようと思ったら、出られなくなってしまった」語った様に後の事を考えての騎乗でしたので一概に「騎乗ミス」とは言えない結果でした。
このレースの勝利を確信していたフラワーちゃんのオーナーである西山正行氏は息子の茂行氏を連れて競馬場まで観戦しに行ってたのですが、まさかの結果に動揺しつつも「大馬主はこれくらいの事で動じてはいけない」とおっしゃったそうです。
流石は大馬主、人間が出来てます。
しかし検量室に行った正行氏は、
「この下手糞!」
と丸めた競馬新聞で佐藤騎手の頭を叩いたそうですw
自信を喪失した佐藤騎手から松田氏へ桜花賞の騎乗を辞退したい旨が要請され、佐藤騎手自身の薦めでフラワーちゃんの騎手は河内洋騎手に変更となります。
桜花賞では前走より人気を落としながらも、オッズ2.3倍の1番人気に推されます。
レースは打って変わった先行策から直線入り口で先頭に並ぶと、アドラーブルに対して前走から逆転となる3馬身半差を付けて見事優勝します。
乗り替わりの責務を果たし、史上最多記録となる4度目の桜花賞制覇となった河内騎手は後に「(牝馬三冠を獲得した)メジロラモーヌ以上のプレッシャー」だったと回顧しています。
次走には牝馬クラシック二冠を目指してオークスに臨みますが、桜花賞後から急激に食が細り馬体の維持に時間を割かれ、強い調教ができないままの出走となります。
レースでは抑えようとする河内騎手との折り合いも欠き、最後の直線入り口では先頭に立つも、直線半ばで失速して7着と敗れてしまいます。
夏の休養を経て体調を戻しますが、秋緒戦のローズステークスは4着、牝馬三冠最終戦・エリザベス女王杯(当時は3歳牝馬限定戦)も3着と、勝利には至りませんでした。
桜花賞までは1600m以下の距離であったのに対し、オークス以降はいずれも2000m以上の距離で敗北している事から河内騎手は「距離に限界があった」とし、松田氏は「典型的なマイラーだった」と語ってます。
◆最強スプリンター
12月20日シーズン最終戦として初の古牡馬混合戦となるスプリンターズステークスに出走。1200mという短距離で、マイルチャンピオンシップを連覇していたダイタクヘリオスに次ぐ2番人気に推されます。
レースでは「古馬と真っ向勝負では分が悪い」という河内騎手の判断から、長所の瞬発力を活かすため後方に控える作戦を採ります。
最後の直線で大外から先行勢を次々と交わし、ゴール前でヤマニンゼファーを差し切り優勝しGI競走3勝目を挙げます。
※ヘリオスは4着、バクシンオーは6着でした。
ちなみにこのレースの残り100mの時点でフラワーちゃんとゼファーの差はこんな感じです。
当時の私はゼファー本命で2着には何が来てもええで!という状態でした。
2番手のナルシスノワールは12番人気だったので「万馬券獲ったか!?」と一瞬喜びましたが、
フラワーちゃんが神速で飛んできて、ゼファーまで躱して優勝しました。
馬券は獲れてましたが、色んな意味でビックリです。
これ中長距離とかじゃ無くて1200mのレースですからね^^;
1992年 スプリンターズステークス(GⅠ) | ニシノフラワー | JRA公式
鬼の様な末脚をご覧になりたい方は↑をご覧になって下さい。
翌年1月に発表されたJRA賞表彰では、最優秀4歳牝馬と最優秀スプリンターの2部門を受賞しました。
◆シニア期
シニア期はマイラーズカップから始動し、前走で退けたヤマニンゼファーとの再戦となります。
レースは先行するフラワーちゃんをヤマニンゼファーがマークする形となりますが、最終コーナーでフラワーちゃんが後続を楽に突き離し、同馬に3馬身半差を付けて圧勝します。
※当時の私はゼファー推しでした。
その後、当年より国際競走となった安田記念に向けて調整が続けられ、5月に迎えた同競走では1番人気に支持さます。
が、先団でのレース運びから直線で伸びず、10着と大敗を喫します。
以後調子を落とし宝塚記念は8着、休養を経た秋緒戦のスワンステークスでは3着と奮いませんでした。
続くGI・マイルチャンピオンシップも13着と再び大敗するも、連覇を目指し年末のスプリンターズステークスに出走します。
結果は・・・
バクシンオーの勝利です。
2着はゼファーでフラワーちゃんは3着でした。
ゼファーも強かったのですが、勝ったバクシンが余りにも強すぎました。
これを最後に競走馬を引退し、翌1994年1月9日に阪神競馬場で引退式が行われました。
◆繁殖牝馬として
15回の種付けで11回出産します。
ウマ娘ですとタイキシャトル、セイウンスカイ、アグネスタキオン(2回)との子がおり、タニノギムレット、シンボリクリスエスは不受胎でした。
重賞を獲る様な子は生まれませんでしたが、OP戦勝利や重賞2着の馬などもおりまして、平均アベレージは高かったと言えます。
※孫の代では重賞を勝利しております
◆天才少女から偉大な母へ
2020年2月5日、老衰のため、繋養先である北海道日高町の西山牧場で死亡します(31歳没)
墓は2020年5月に西山牧場(西山牧場育成センター)のセイウンスカイのお墓の隣に設置され、墓石には西山茂行氏の『天才少女から偉大な母へ 西山牧場を救った名牝に 感謝を込めて』という言葉が刻まれてます。
産駒に目立った活躍が無い様に見えますが、11頭も出産して9頭をターフに送り込み、重賞レースで惜しい処まで行った子もいます。
当時順調とは言えなかった西山牧場を救ったのが間違い無い事をこの墓標から読み取る事が出来ます。
ウマ娘では可憐な少女なのに、ママみが強い理由がおわかり頂けたかと思います。
◆実はじゃじゃ馬だった
ウマ娘では真面目で優等生なフラワーちゃんですが、リアルの方は気性の荒い馬でした。
何度か掛かり気味で負けたレースがあるのですが、中でも宝塚記念ではスタート直後から盛大に引っ掛かって大暴走し、前年覇者のメジロパーマーにしつこく絡んでいってすり潰した挙句、自身も最後の直線で力尽きて8着に敗れてます(パーマーは10着)
◆真に強い馬だった
現役時代は最大でも430kgそこそこの小さな馬体でしたが、短距離では牡馬相手に互角の戦いをし、苦手な中距離でも一定の成績を残してます。
ヤマニンゼファーを驚異的な末脚で差しきったり、56kgの斤量を背負って牡馬相手に3馬身以上の差つけて勝つとか普通ではありません。
シニア期は敗戦に塗れましたが、最後のスプリンターズステークスは見事な走りだったと思います(先着した馬達が強すぎだったので)
私が馬券を買った時だけ勝ってくれたフラワーちゃんには今でも感謝しておりますが、ウマ娘でこんなに可愛く転生(?)して再び会えるとは思ってもみませんでした。
私の好きなカップリングはフラワー×ウンスです。
ウンス×フラワーではありませんし、タキオンやタイキも無しです。
いや、フラワー×ウンスにタキオンやタイキがちょっかいを出して来る展開は好きかもしれません。
余計な話をしてしまいましたが、フラワーちゃんが勝ったスプリンターズステークスは本当に見事なレースなので、是非youtubeでご覧になって下さい。
それでは、良きウマ娘ライフをノシ