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菅野ひろゆき三部作を語りたい

毎週水曜日はechoさんのアニメレビューの日なのですが、今回は趣向を変えてechoさんがエロゲについて語る記事になりましたw
それではどうぞです。

16bitセンセーション見てますか?
面白いですよね。
主人公のこのちゃんがアニメ的なキャラクターでありながら、好きなゲームを作れない苦悩や、今の美少女ゲーム業界が抱える閉塞感も描かれていて非常に興味深いです。
美少女ゲームの発売年にタイムリープする事で、当時上り調子だったゲーム制作現場を垣間見る事が出来る仕掛けも面白いですし、制作サイドの美少女ゲームへの熱い思いを感じられる素敵なアニメだと思います。

さて、私はこのアニメで描かれている当時はまだ学生だったのもあってPCを買えず、美少女ゲームは憧れの存在だったのですが、人気美少女ゲームはセガサターンへの移植作が多く「同級生2」(と「サクラ大戦」)を買う為にプレステーションを諦めてサターンを購入した、時代と逆行した人間だったのでした。
今となれば良い思い出もたくさんあり悪くない選択だったと思っています。そんなサターンでプレイしたゲームの中で忘れられない作品が何本かあります。
みなさん、菅野ひろゆき(剣乃ゆきひろ)三部作って知ってます?
当時、紙芝居ゲームが多い美少女ゲーム界に突如として現れた天才「菅野ひろゆき氏」が送りだした本格的アドベンチャーゲーム『DESIRE 背徳の螺旋』『EVE burst error』『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』の3本で、その後の美少女ゲーム界に大きな影響を与えたエポックメイキング的な作品です。
当時こんなに名作だとは知らずにプレイしていたのですが、今にして思うととんでもない作品だったことが分かります。

まず、最初に発売されたのが菅野ひろゆき氏がシーズウェアに所属していた時に制作された『DESIRE 背徳の螺旋』です。
一番古い作品だけあって、他の2作と比べるとゲームシステム的に強い独自性がある訳ではないのですが、二人の主人公の視点で一つの事件を追って行くストーリーは重厚で心揺さぶられるものがありました。
とある離島の研究施設に取材に訪れたアルと、その研究所に所属する研究員でアルの恋人マコト。
その2人の視点で徐々に研究施設の真の目的と不可解な事件の真相が徐々に明かされていき、やがてプレイヤーは研究施設の正体に気づいて行くのですが、二人の物語を終えたあとに始まる第三の主人公によって明かされる衝撃の真実に私は打ち震えました。
ラスト間際でやっと真実に気づいた私は思わず号泣してしまい、呆然としながらゲーム画面を見つめていた事を今でも覚えています。
ゲームシステムは目新しさはあったものの洗練されておらず、総当たり式のアドベンチャーゲームの域を出ていませんし、マコト編はほとんど良くあるNTRなストーリーでゲーム上必要性があったのか疑問ではありますが、それを補って余りある素晴らしい作品なので機会があればプレイしていただきたいです。
リメイク版がSwitchで発売されていて今の環境でもプレイ可能です。

続いて発売されたのが『EVE burst error』です。
こちらも菅野ひろゆき氏がシーズウェア退社前に制作したアドベンチャーゲームになります。
2作目だけあってマルチサイトシステム(2人の主人公によりストーリーが進行していくシステム)がかなり洗練されていて、それぞれの主人公がフラグをとかないと、もう一方の主人公のストーリーが進まなかったりとゲームとしての完成度が高くなっています。
主人公は、うだつの上がらない私立探偵で絵画の捜索を依頼される天城小次郎と、内閣調査室の捜査官でエルディア駐日大使の娘である御堂真弥子の護衛を命じられる法条まりな。
2人の追う事件がやがて1つの大きな事件に繋がっていくという、ハードボイルド、クライムサスペンスでストーリーを追うだけで面白い作品です。
また、推理要素も組み込まれていて同時期にコンシューマーゲームでヒットしていた「かまいたちの夜」や「街 〜運命の交差点〜」を彷彿とさせるゲームシステムになっています。
この作品も最後に『DESIRE 背徳の螺旋』同様に驚きの展開が待っていて、何度もリメイクされた作品です。
また菅野ひろゆき氏は制作にかかわっていませんが続編も作られていて、それなりに面白くはあるのですが『EVE burst error』の面白さには及ばず、唯一無二の作品と言えると思います。
これをわずか制作期間4カ月で作ったと言うから驚きです(当時のエロゲは制作期間4カ月が標準だったらしく、それゆえに紙芝居ゲームが多かった)
菅野ひろゆき氏はまぎれも無く天才と言えるでしょう。
現在でも『EVE burst error R』というリメイク版がSwitchなどで販売されているのでプレイする事が可能です。
ゲームとしての完成度も高いので今プレイするならこのゲームが一押しになります。

3本目は『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』です。
菅野ひろゆき氏が大手ゲームメーカー「エルフ」からスカウトされ、8か月の制作期間を得て制作したSFアドベンチャーゲームになります。
今作では「Auto Diverge Mapping System(オート分岐マッピング・システム)」通称「A.D.M.S(アダムス)」と呼ばれるシステムを採用されています。
主人公が辿った物語が「分岐マップ」に記録され、シナリオがオートマッピングされる仕組みになっていて、記録された分岐マップの中を自由に移動することができるシステムです。
「宝玉」と言うアイテムを集めることがゲームの目的になっていて、その「宝玉」をタイムリープのセーブポイントとして利用しながら、物語の真相に近づいていくというゲームシステムとストーリーがリンクする作りになっています。
主人公有馬たくやは、死んだはずの父親から届いた小包を切っ掛けに、並列世界を探索しながら自身の出生の秘密や街に隠された謎を解き明かしていく事になります。
とにかく膨大なテキスト量かつ緻密なストーリーで、衝撃展開も多く、近親相姦やカニバリズムなど倫理的タブーに触れる描写があるためリメイクの難しい作品とされています。
感動的な展開もあるにはあるのですが、どちらかというと世界観や展開に圧倒されるという感覚に近いゲームです。
またゲーム性が非常に高いので先が気になって仕方が無い中毒性があり、寝不足になりながらプレイしていた事を覚えていますw
菅野ひろゆき3部作の中で一番の大作で、代表作と言っても良いと思います。
一度テレビアニメ化もされているのですが、この世界観を正しくアニメ化出来たとはいえず、やはりゲームでプレイして頂くのが一番だと思います。
リメイク版がSwitchなどで販売されているので、他の2作をプレイしてみて興味の出た方はプレイしてみて下さい。

システム的にもシナリオ的にも非凡な才能を発揮した菅野ひろゆき氏ですが、YU-NO制作後は独立し何本かゲームを制作していますが大手ゲーム会社に所属していた時の様な大作は制作しておらず、43歳の若さで亡くなってしまいました。
この3作は時代の流れや萌えゲームブームのなかで突如、突然変異的に現れた唯一無二のゲームです。
ゲームシステム的には時代遅れになってしまったかも知れませんが、今プレイしてみても驚きと感動のある作品だと思います。
著作権的にも難しいところのある作品なので、16bitセンセーションでは登場しない可能性が高そうですが、あえてこの3作を取り上げてみました。
気になっていた方は是非この名作に触れてみてほしいですし、昔プレイした方はこんな作品もあったなぁとたまには思い出して上げて下さい。
では、良きゲームライフを!

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